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2018年2月 7日 (水)

コーチング現場:人を変えるか、自分が変わるか

ある会社の入社3年くらいの若い社員Aさんから、声をかけられました。相談したいというのです。内容は、次のような話でした。

 

営業で移動の途中、優秀な営業マンで、プレイイングマネジャーでもある上司から「ある程度ターゲットをどこかに絞ったらほうがいいのではないか」とアドバイスされた。

 

Aさんも「そうやな、ターゲットを絞っていったらいいかっ」と考え、営業のターゲットリストを作った。調べていったら時間がかかり、会社での在席時間も長くなった。すると、上司が作業をのぞき込んで、「何やってんの。ある程度業者の分かるリストがあるのだから、それでざっと絞ったらターゲットの会社に話しに行けよ」と言ったという。

 

常々上司はその人に「お客様と会える時間を大切にしろ。いすに座ってて何が営業か」と言っていたそうです。とても仕事のできる上司で、そのAさんにとっては、憧れでもあり、一つの目標でした。

 

発言について、上司の真意は確かめていませんが、豊富な営業経験を基に、部下に効果的なターゲットの絞り方を示し、役に立つ情報を与えたと思っているかもしれません。

 

しかし、Aさんからすると、上司に示された方向で自分なりにトライし、その過程で疑問、発見、探求心が生まれてきて、つい、いいリストにしようと仕事に時間がかかってしまったのに、といった反発もあったようです。

 

いい情報を与えてもらった、というよりは、自分を否定された、といった感じのほうが強かったと言います。憧れ、ああなりたいと思っていた上司だけに、ショックは大きかったようです。

 

Aさんだけでなく、「何やってんの」と言った上司の気持ちも推し量ってみると、「お客様に会う時間を大切にしなさい」と日ごろから口を酸っぱくして言っていたのに、ずっと会社にいるそのAさんに、がっかりもし、イラだってもいたのではないでしょうか。

 

長年の営業経験から、リストを突き詰めても営業効果がそれほど期待できないとわかっていたので、時間がもったいないからと助言したのかもしれせん。上司のイラだち、がっかり、残念といった気持ちは、そのAさんに伝わっていたかもしれません。

 

こうした状況を踏まえた上で、その若手Aさんにコーチングをしました。

 

コーチ:今回の一連の動きの中で、Aさんと上司、両者が手に入れたい、ほしいと思ったものは何ですか?

 

Aさん:それは、「ターゲットを意識して営業する」ということです。上司のそうした発言に同意したからこそ、私は自分から進んで行動し始めたわけです。

 

コーチ:つまり、目指すゴールは共有できていたわけですね。次に、その共有した目的に向かって、Aさんはどう行動しましたか?

 

Aさん:自分でやり方を考え、実際にリスト作りを進める中で新たな課題を発見、それも考慮しつつリスト完成を目指しました。

 

コーチ:それに対して、上司からの評価はどうでしたか?

 

Aさん:「いいことをした」と言われると思ったら、「何やってんの」でした。

 

コーチ:Aさんの取り組みは報われましたか?

 

Aさん:答えは「ノー」です。報われません。

 

コーチ:上司としては、うまく営業できるようアドバイスしたにすぎないかもしれませんが、Aさんは「自分を否定された」と感じたのですね。

 

上司とAさんには気持ちのズレが生まれ、Aさんも上司も注いだ努力が報われないことになってしまったのでしょう。

 

Aさん、もう一回同じプロセスがあるとしたら、あなたは何を改善します?

 

上司に、対応を改めてもらうのも一案ですが、他人である上司を変えようとするのは余り効果的とは思えません。ここはひとまず、あなたができることから考えてみましょう。

 

Aさん:ターゲットのリストを作って、課題を発見すると、面白くなって自分の興味のまま突っ込んでいった気がします。ここで思い返して、リスト作業にブレーキをかけるべきだったかもしれません。

 

コーチ:では、これから、どうしたらいいと思いますか?

 

Aさん:日ごろから、上司の指示の出し方が明確ではない感じがします。話の一つかと思ったら指示だったり、指示かと思って行動したら指示でなかったり、といったことが何回かありました。

 

これからは、あいまいだと感じたら、自分から、「今のお話、こうしたいのですが」と相談してみます。

 

指示を受けて取り組んでいる最中、当初予想しなかったことが起きた場合は「今こんな状況ですが、こうしようと思うのですが・・・」と上司に相談します。

 

コーチ:上司への相談、途中連絡、報告によって、物事がうまくいくようになったら、あなたも満足、上司も満足でしょうね。

 

上司に、言い方を変えてください、とお願いすることも一つの糸口ですが、あなた自身の上司への接し方を工夫して、あなたが成長していくことも大切な道だと思います。成長した分、あなたにとって財産になるのですが、あなたはどちらを選びますか?

 

Aさん:自分を変える道を選びます。

 

 

今回のコーチングは、若いAさんからの相談がきっかけだったので、部下の立場からの目線ですが、上司は上司でいろいろな工夫ができそうです。

 

上司は、経験が豊富で立場も上ですから、つい部下に命令し、思いのまま部下を変えようとしがちです。しかし、今回のAさんのコーチングでは、人は、他人を変えるよりも自分を変えることで、より簡単によりよい成果を手に入れることできそうです。

 

上司は上司としての、指示の出し方、ものの言い方、声かけや確認のタイミング。そういったことを一つ一つ工夫することで、部下を変えなくても、部下が自然に創造性を発揮し、スキルアップし、成長するようになります。

 

上司は上司として、自分の改善点を自分で発見して、部下との共通目的のスムーズな達成に向けて邁進(まいしん)していきたいものです。

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